1. 残価設定ローンとは?
仕組みと誕生の背景
「残価設定ローン」とは、車の購入時に一定期間後の買取価格(残価)をあらかじめ設定し、その残価を除いた金額のみを分割払いするローンのことだ。一般的に「残クレ」とも呼ばれ、月々の支払いを抑えながら新車に乗れるという魅力がある。
この仕組みが生まれた背景には、2000年代の車業界の変化がある。当時、スマートフォンもなく、ネットで中古車の価格を簡単に調べることもできなかった。そのため「5年後にこの車がいくらで売れるのか」が分かりづらかったのだ。そこでメーカー側が「5年後の下取り価格を保証する」という形で残価設定ローンを作ったのが始まりだった。
なぜ人気があるのか?
現在、残価設定ローンは特にトヨタやホンダといった大手メーカーで広く利用されている。その理由は、やはり「月々の支払いが安くなる」点にある。例えば、300万円の車を購入する場合、通常のローンなら300万円全額を支払う必要がある。しかし、残価設定ローンなら「5年後の買取保証額(例:100万円)」を差し引いた200万円分だけを支払えば良い。この仕組みが、より高級な車にも手が届く手段として注目される理由だ。
しかし、世の中に「絶対に得する」ローンなど存在しない。実際には、残価設定ローンを組んで後悔する人も多いのだ。次章では、そのメリットとデメリットを詳しく見ていこう。
2. 残価設定ローンのメリット
月々の支払いを抑えられる
残価設定ローンの最大のメリットは、月々の支払い負担を軽減できることだ。例えば、通常ローンで300万円の車を5年ローンで購入すると、単純計算で月々5万円以上の支払いが発生する。しかし、残価設定ローンなら、あらかじめ設定された「5年後の下取り保証額(残価)」を除いた額でローンを組むため、月々の支払いが3万円程度まで下がることもある。
これにより、より高級な車に手が届きやすくなるため、「ワンランク上の車に乗りたい」という人には大きなメリットとなる。
5年後の買取保証がついている
中古車市場は変動が激しく、5年後にどのくらいの価格で売れるのかを予測するのは難しい。だが、残価設定ローンではメーカーが一定額での買取を保証してくれるため、「思ったより車が安くなっていた…」というリスクを回避できる。
ローン審査が通りやすい
実は、通常のオートローンよりも残価設定ローンのほうが審査に通りやすいことがある。これは、ローンの仕組み上「車の所有権がメーカーやディーラーにあるため、万が一支払いが滞っても車を回収できる」という理由からだ。そのため、通常ローンが通らなかった人でも、残価設定ローンなら通るケースも多い。
3. 残価設定ローンのデメリット
途中解約のハードルが高い
一度残価設定ローンを組んでしまうと、途中で解約するのが難しくなる。通常のオートローンなら一括返済してしまえば車を売却できるが、残価設定ローンはそうはいかない。途中解約には高額な手数料がかかるため、「ライフスタイルの変化で車を買い替えたい」と思っても簡単には乗り換えられないのだ。
5年後の査定額が固定されている問題
5年後に車の市場価値が上がっていたとしても、残価設定ローンでは設定された額でしか買い取ってもらえない。例えば、実際には150万円の価値がある車でも、残価設定ローンでは100万円での買い取りとなるため、その差額分を損することになる。
走行距離や車の状態による追加費用
残価設定ローンでは、「5年間で5万キロまで」といった条件が設定されることが多い。この制限を超えてしまうと、買取保証が適用されず、追加費用を支払う必要が出てくる。また、車に傷が多かったり、事故歴があると、保証された買取額よりも低い金額になってしまうリスクもある。
4. 結局、残価設定ローンは得なのか?
損する人のパターン
- 長く同じ車に乗りたい人:残価設定ローンは短期間で乗り換える前提のため、長く乗るなら通常ローンのほうが安い。
- 走行距離が多い人:制限を超えると追加費用が発生するため、よく長距離を走る人には向いていない。
- 車の価値が上がる可能性が高い車を選ぶ人:高リセールの車を選ぶなら、通常ローンで購入し、売却時に高く売るほうが得をする可能性が高い。
得する人のパターン
- 短期間で車を乗り換えたい人:5年ごとに新しい車に乗り換えたい人には向いている。
- 初期費用を抑えたい人:頭金なしで新車に乗れるため、まとまったお金を用意できない人にとってはメリットがある。
- リセールを考えず気軽に車を持ちたい人:買取保証があるため、車の価値変動を気にせず乗れる。
まとめ
- 残価設定ローンは「月々の支払いを抑えながら新車に乗れる」というメリットがあるが、途中解約が難しく、走行距離や車の状態によっては追加費用が発生するリスクもある。
- 長く同じ車に乗りたい人、走行距離が多い人には向かないが、短期間で乗り換えたい人には適した選択肢となる。
- どちらが得かはライフスタイルや車の使い方次第。契約前に慎重に検討することが重要だ。
「残クレが気になるけど不安…」という人は、しっかりとシミュレーションをして、自分に合ったローンを選ぼう。